2030年には高齢者の7人に1人が認知症になると推計されている(厚生労働省)。認知症介護に関わるお金の問題は、もはや誰にとっても他人事ではない。
認知症が進行すると、真っ先に家族が直面するのが「銀行口座の凍結」だ。金融機関が名義人の判断能力の低下を把握すると、本人保護を理由に口座が凍結される。家族であっても預金を引き出せなくなり、施設費や医療費の支払いが立ち往生する。多額の定期預金が眠っていても、本人の意思確認ができなければ解約もできない。「いざとなれば引き出せる」という思い込みが、家族を突然の経済的窮地に追い込む。
こうした事態を防ぐために有効なのが、元気なうちに銀行の「予約型代理人サービス」に登録しておくことだ。無料で手続きでき、診断書があれば登録した家族が入出金を行える。また、資産の管理・処分権限を家族に託す「家族信託」は、認知症発症後も家族が実家を売却して施設費に充てるなどの柔軟な対応を可能にする。いずれも判断能力があるうちにしか手続きできない。
施設費用については、民間の有料老人ホームは月額の基本料以外に通院付き添いや買い物代行、おむつ廃棄料などの実費が積み重なり、想定を上回るケースが多い。公的な特別養護老人ホームは費用を抑えやすく、所得が低い世帯には食費・居住費の減免制度もある。また、「高額介護サービス費」の還付申請や「世帯分離」による保険料段階の引き下げなど、知っているかどうかで家計への影響が大きく変わる制度が複数存在する。
忘れてはならないのが、認知症介護のお金は「親の資産と年金の範囲内で賄う」という大原則だ。子が自分の貯蓄を削り続ければ、やがて自身の老後も立ち行かなくなる。介護のために離職することは、将来受け取る年金額の減少にも直結する。
備えのタイムリミットは、「まだ大丈夫」と思っている今だ。財産目録の作成、エンディングノートへの記録、家族での率直な話し合い——これらに早く取り組んだ家族ほど、後の混乱を防ぐことができる。
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