介護は、ある日突然始まる「生活設計」の変更である。その根幹を支えるのは、身体的な介助以上に「お金」の適切な管理だ。多くの家族が直面する課題を整理し、持続可能な支援の在り方を考える。
まず警戒すべきは、認知症による資産の凍結である。本人の判断能力が失われると、銀行口座からの引き出しや不動産の処分が困難になり、介護費用を本人の預金で賄えなくなる事態を招く。これを防ぐには、元気なうちから代理人指名制度や任意後見、家族信託といった法的手段を検討し、準備しておくことが不可欠だ。
在宅生活を維持する場合、手すりの設置や福祉用具の導入は、本人の「できる力」を引き出すための環境投資となる。しかし、過剰な便利さはかえって能力を奪う「やりすぎ介護」に繋がりかねない。一方、施設入居を検討する際は、月額費用だけでなく、消耗品や医療費を含めた「総額」でのシミュレーションが求められる。適切なケアによって長寿化する可能性も視野に入れ、長期的な資金計画を立てるべきだ。
家族間のトラブルを防ぐ鍵は、管理の透明性にある。親のために使った費用は領収書と共に記録し、情報を共有する。また、子供が仕事を辞めて介護に専念する「介護離職」は、自身の将来を脅かす経済的リスクが高い。外部サービスや介護休業を駆使し、親の年金と貯蓄を優先的に使う「親の資産で支える介護」を基本に据える必要がある。
最期をどこで、どのように迎えたいか。本人の自己決定を支えるための経済的基盤を整えることは、人生のクライマックスを尊重し、家族が納得感を持って歩むための愛ある決断である。
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